環境白書 2009

採用情報

看護部

臨床研修

薬剤科

環境白書 2009

はじめに

当初、医療施設における環境問題への取り組みは「自然環境にやさしい」というより、「人体にやさしい」診療行為(検査、投薬、点滴、処置、手術等)の管理(無駄をなくす)の方が医療従事者になじみやすく、医療のあるべき姿に直接つながるような気がしました。
一方、あらゆる環境問題は、人体や生物の健康や生命に直接・間接的に危害を加えるものとして位置づけられており、それらの対策の根本にあるものは言うまでもなく永続的に人類を守ろうとする工夫です。
その工夫は公衆衛生医学あるいは予防医学そのものとも言え、アプローチの方法は異なっても究極的にはゴールは同じだと気付きました。
今では、医療施設の管理者や従事者は率先して環境保全に勤めるべきだと感じています。

当院は、平成15年 3月にISO14001の認証を取得しました。
「人にも環境にも優しい病院になります」を環境方針の第一テーマとし、環境マネジメントシステムを運用して、その継続的改善と環境汚染の予防に努めています。
これまでに、省エネ・省資源化・リサイクルの促進・廃棄物の適正管理・環境意識の向上等を軸にした「環境目的」をもとに活動し、平成18年、そして平成21年の更新審査をクリアしました。
日々の業務に関連した「環境目標」を毎年設定し、スパイラルアップを図ってきた結果だと感じています。

ISOの取り組みを通じて、院内におけるもう一つの大きな利点は、病院の全職員が、部署横断的に共通の方針の下で活動を行うため、職員間の交流や組織の結束、病院団結の一つのツールになることです。
対外的にも取引業者や委託業者が環境活動に協力・参加することで、その影響が地域社会にも広がっています。

当院は築後40年を経過し、病院本体や諸設備の老朽化が激しく、平成19年4月に全面立替えが決定しました、目下基本設計中ですが、平成24年度に開院予定の新病院においても、建築物の外部環境負荷に対する環境品質・性能の割合によって評価されるラベリング指標BEE(Building Environmental Efficiency = 環境性能効率) 3.0以上(Sランク)を目標としています。
また、当然ながら建築・解体工事期間中に発生する騒音、振動、塵埃などの環境負荷に対しても十分な配慮をしなければなりません。

このようにして地域に溶け込み愛され、誇りとされる病院を目指しております。
今後とも、環境活動も加味した医療の質的向上を図っていきたいと考えています。

2009年7月
中津市立中津市民病院 院長

環境パフォーマンスデータ

INPUT

エネルギー

2006年度、2007年度とあまり増減がありませんが、2008年度電気使用量は対前年度比で50.2%増となっています。
要因としては、A重油の価格高騰によるコスト削減のため、買電気量を増やしたことによるものです。
また、MRIの導入なども原因のひとつと考えられます。逆に、2008年度A重油使用量は前年度比で22.3%減となりました。
これは、原油価格高騰のための使用量減によるものです。

2008年度ガス使用量は前年度比で18.3%減となりました。
2007年度のガス使用量は前年対比102.4%の増になっていますが、これはLPガスから天然ガスに変更になったことによるものです。

資源

2006年度から2008年度の上水道(市水)使用量に大きな変化はありません。
2008年度使用量は前年度比で1.9%増となりましたが、当院では、節水の呼びかけやトイレなどの排水等に井水の活用を継続的に行っています。

  • 測定対象:市水
エネルギー・資源使用量のグラフ

OUTPUT

医療廃棄物

医療廃棄物量は、2006年度から2008年度にかけて年々増加しています。
2008年度医療廃棄物量は前年度比1.8%増となりました。
そのうち、感染性廃棄物は1.6%増と増加量のほとんどを占めています。
これは、医療の質、安全性の向上のため医療資材の使い捨て化が進んでいるためです。

  • 測定対象:感染性医療廃棄物、非感染性医療廃棄物
CO2排出量

2007年度CO2排出量はA重油使用量増加のため前年度比9.9%増となりましたが、2008年度CO2排出量は、前年度対比で4.4%減となりました。
重油価格高騰により、A重油の使用量が減少したためと考えられます。
逆に買電気量は増えたため、電気使用によるCO2排出量は増加していますが、A重油燃焼によるCO2排出量の減のため、全体排出量は減少しています。

医療廃棄物・CO2排出量のグラフ

主な環境活動

環境整備活動

病院構内の清掃活動

毎週月曜日17時から病院構内の清掃活動を行っています。

ハイブリッドカーの使用

ハイブリッドカー

ハイブリッドカーを使用することで、環境負荷低減に努めています。

環境整備活動

当院では、昼休みの事務室や使用していないトイレなどの消灯を心がけています。

院内での取り組み

医療機器故障の削減

医療機器故障の削減

医療機器の故障や破損が多いことから、医療機器の故障を削減するために、2006年度から故障・修理報告書、臨床工学新聞を作成・配布し、再発防止を呼びかけました。
また外注修理費用の削減と臨床工学技士のスキル向上を目的に機器メンテナンス講習会に出席しました。
これにより修理件数は年々削減でき、2005年度に72件であった故障件数が2008年度は52件となり、対35%の削減ができました。

医療材料の無駄を削減

医療材料の無駄を削減

医療材料を無駄にしないという環境方針のもと、消耗備品や放射線フィルム、抗生物質点滴等の無駄を削減するため、活動をしてきました。
手順書の作成、会議や院内メールを通じての周知徹底を行い、毎月の集計、報告をし、職員の意識づけに努めました。
これにより、すべての削減活動において、目標を上回る結果が得られました。

医療廃棄物の分別の徹底

医療廃棄物の分別の徹底

環境方針にある医療廃棄物の分別収集を徹底するために、外来のゴミの分別方法を改善しました。
外来各科のゴミ箱設置場所を確認し、職員の分別に対する意識調査をしました。
その結果、分別方法に誤りが多いことが見受けられたため分別しやすいゴミ箱を購入し、分別方法の一覧表を貼用したところ分別間違いが減少しました。

残飯残菜の削減

残飯残菜の削減

当院では病院食の廃棄を減らすため、入院時の食事量の確認、ハーフ食・全ハーフ食の積極的取り入れを行いました。
そして、患者さんの外出・外泊時の食事の停止を徹底し、一食につき5割以上残菜がある患者さんの食種を主治医と相談し変更しました。
また、献立に対するアンケート調査を実施し、結果を献立に反映しました。
これにより、2006年度の一人一日平均残菜量は245.6gで、2005年度に比べ5.1%の削減ができました。

血液検査における生化学項目数の削減

血液検査における生化学項目数の削減

医療機器の故障や破損が多いことから、医療機器の故障を削減するために、2006年度から故障・修理報告書、臨床工学新聞を作成・配布し、再発防止を呼びかけました。
また外注修理費用の削減と臨床工学技士のスキル向上を目的に機器メンテナンス講習会に出席しました。
これにより修理件数は年々削減でき、2005年度に72件であった故障件数が2008年度は52件となり、対35%の削減ができました。

処方箋(内服・注射箋)の廃棄率の削減

処方箋(内服・注射箋)の廃棄率の削減

全処方箋枚数に対する紙の廃棄率の達成目標を年間累計8%以下に設定し、2007年度から2ヵ年活動しました。
手順書を作成・掲示し職員に周知徹底を行い、処方箋発行前に疑義照会を行い訂正することで、不要な紙を出さないように心がけました。
また削減活動に取り組みやすいようにコンピューター内の設定を調節しました。
これにより、2008年度には全処方箋枚数に対する紙の廃棄率が年間累計3.4%となり、目標を達成できました。

不必要な造影剤の削減

不必要な造影剤の削減

放射線部門では、不必要な造影剤の削減を三年間継続して取り組みました。
活動内容は緊急時の造影の注意点を医局会で発表し、その後月々の達成状況を院内メールにて各医師に報告することで、職員に不要なCTの削減を求めました。
また、造影剤使用時に患者さんに副作用等の説明を行うとともに、同意書を求めることを徹底しました。
これにより、活動前に比べ3年目には17%の削減を達成できました。

保管薬定数の削減

保管薬定数の削減

使用期限切れの保管薬を減らするために、病棟の常備定数を見直し、病棟と担当薬剤師双方で連携をとり、毎月ごとの定数を確認・修正することで使用期限切れによる保管薬の削減を行いました。
その結果、一年間で22.2%削減できました。

レセプト請求の電子データ化

レセプト請求の電子データ化

紙使用量削減のため、当院の医事課職員とシステム業者との間で連携を取り、医事会計システムの機能を見直し、国保・社保への提出データを紙ベースから電子媒体への変更をしました。

マネジメントレビューより

2003年3月にISO14001の認証を取得し、毎年の内部監査ならびに外部監査によって、病院経営の透明性が増し、近代的病院経営が緒に就いてきました。
昨今、環境問題は地域の問題ではなく、地球規模の問題へと姿を変えています。
これは、予防医学も含めた医療全体の問題としての側面も持つということであります。
今後も環境活動を通して、医療のあるべき姿を目指していきたいと思います。